日本には春夏秋冬の四季があり、その季節になると様々な野菜や果物や魚介類が旬を迎えます。
それら食材は、一年を通してエネルギーが高く栄養豊富で、何よりも一番美味しく頂ける時期です。
旬の食材を食べることで地球のエネルギーの循環サイクルに乗っかり、栄養価の高い食材を摂ることが出来ます。そうすることでいつまでも健康を維持することが出来るのでないかと考えます。
では、文月にはどんな旬の食材があるのでしょうか。
穴子
江戸時代後期頃から食文化が隆盛してきて、多くの屋台で蕎麦や天ぷら、寿司など多くの料理が食べられ始めました。
そして穴子は江戸湾で多く獲れたことから天ぷらや寿司のネタとして人気を呼ぶ食材の一つです。
こんなエピソードも在るくらい穴子は江戸庶民に人気の食材でした。
江戸後期、屋台で出される穴子の天ぷらが庶民の大好物となりました。ある屋台で男が「うめえ!」と声を上げると、通りがかりの人々が次々集まり、あっという間に売り切れてしまう──そんなエピソードが伝わっています。江戸っ子の活気と穴子の人気ぶりをよく表した一幕です。
穴子の栄養と健康効果
たんぱく質
丈夫な筋肉や肌、髪のもととなる良質なたんぱく質が豊富です。
ビタミンA
目や粘膜、肌の健康をサポートします。免疫力の維持にも役立ちます。
ビタミンB群(B2、B12など)
エネルギー代謝を助け、疲労回復や貧血予防などの働きがあります。
EPA・DHA
血液をサラサラにして、動脈硬化や心疾患の予防、脳の健康に役立ちます。
ミネラル(カルシウム、亜鉛など)
丈夫な骨や歯、免疫力の向上、味覚の維持など、体の基本を支えます。
穴子は、身もやわらかく、栄養も豊富で、目や肌、体の元気を支えてくれます。疲れをとり、血液や脳の健康もサポートしてくれる、やさしくて力強い魚です。
穴子を使った料理
穴子の白焼き
脂ののった穴子を、ただ塩だけで焼き上げる。 火の遠い炭で、皮目を香ばしく、身をふっくらと。 余計なものはいらぬ、塩だけが穴子の旨味を引き立てる。 一口、口に運べば、身の甘みが舌から喉へ、静かに滑り落ちる。 冷やした辛口の酒などあれば、なおさらよい。
レシピ(4人前)
- 穴子 … 2尾(開いて骨を抜いたもの)
- 塩 … 適量
- すだち、わさび … お好みで

穴子の天ぷら
穴子を天ぷらで、というのもまた、粋である。 身を程よい大きさに切り、薄衣をまとわせ、さらりと油へ落とす。 揚げたての穴子が、皿の上で白く身を張れば、姿も味も文句なし。 塩で食うもよし、天つゆで食うもよし、あるいはただ、肴としてつまめばよい。 身の甘みに、自然と笑みがこぼれるというもの。
レシピ(4人前)
- 穴子 … 2尾(三枚おろし)
- 天ぷら粉 … 適量
- 冷水 … 適量
- 揚げ油 … 適量
- 塩または天つゆ … お好みで
穴子の煮付け
脂ののった穴子なら、煮てもなおよし。 酒、醤油、味醂、砂糖であっさり煮つけ、身が崩れぬよう、静かに炊く。 火からおろした後、煮汁につけたまま、ゆっくりと味を含ませれば、身も舌も、満ち足りたものとなる。 熱々の白飯と共に、頬張れば、江戸っ子でなくても、心から満足できる味となる。
レシピ(4人前)
- 穴子 … 2尾(開いて骨を抜いたもの)
- 酒 … 100ml
- 醤油 … 大さじ3
- 味醂 … 大さじ3
- 砂糖 … 大さじ1
- 生姜(薄切り) … 2〜3枚
穴子の柳川風
穴子の身を笹がきごぼうと共に、出汁、醤油、味醂で煮立て、卵でとじる。 「柳川風」というもの、身も心も温めてくれる、庶民の粋である。 一口すすれば、甘辛の煮汁とごぼうの香りが、穴子の脂と共に口中で踊る。 めしが進み、酒が進み、夜が更ける。そういう料理である。
レシピ(4人前)
- 穴子 … 2尾(開いて骨を抜いたもの)
- ごぼう … 1/2本(笹がき)
- 出汁 … 300ml
- 醤油 … 大さじ2
- 味醂 … 大さじ2
- 砂糖 … 大さじ1
- 卵 … 3個
穴子というもの、塩で焼けば江戸前の風、天ぷらなら涼やかな酒肴、煮てもなお、身と心を豊かにしてくれる。どんな料理となろうと、穴子の身から立つ、ほの甘い香りだけは、裏切ることがない。