日本には春夏秋冬の四季があり、その季節になると様々な野菜や果物や魚介類が旬を迎えます。それら食材は、一年を通してエネルギーが高く栄養豊富で、何よりも一番美味しく頂ける時期です。旬の食材を食べることで地球のエネルギーの循環サイクルに乗っかり、栄養価の高い食材を摂ることが出来ます。そうすることでいつまでも健康を維持することが出来るのでないかと考えます。では、睦月にはどんな旬の食材があるのでしょうか。
そら豆
そら豆の旬は4月から6月ごろ。12月から1月にかけて鹿児島から出荷され徐々に北上してきます。
そら豆の歴史は古く4000年も前の古代エジプトやギリシャの文献にあったとか。日本では江戸時代の文献に『そら豆』か登場し、明治時代に入ってから本格的な栽培が始まりました。
そら豆の6つの栄養と健康効果
①高たんぱくで筋肉や体の修復をサポート
そら豆は植物性たんぱく質が豊富で、筋肉の成長や細胞の修復に役立ちます。特に運動をする人や成長期の子どもにおすすめです。
② 食物繊維が豊富で腸内環境を改善
食物繊維が多く含まれており、腸の動きを活発にして便秘を予防します。また、腸内の善玉菌を増やし、腸内フローラを整える効果も期待できます。
③ ビタミンB群が豊富でエネルギー代謝を促進
ビタミンB1・B2が含まれており、糖質や脂質の代謝を助けるため、エネルギーを効率よく使えるようになります。特に疲れやすい人や、糖質の摂取が多い人に向いています。
④ 葉酸が多く、妊婦さんにもおすすめ
葉酸は赤血球の生成を助け、貧血を予防する働きがあります。また、胎児の成長に必要な栄養素なので、妊娠中の女性にも適した食材です。
⑤ カリウムが豊富で高血圧予防に効果的
カリウムにはナトリウム(塩分)を排出する働きがあり、高血圧予防やむくみ解消に役立ちます。塩分を摂りすぎがちな人に特におすすめです。
⑥ 鉄分が含まれ貧血対策にも◎
鉄分が比較的多く含まれており、血液を作るのを助けるため、貧血予防に役立ちます。特に女性や成長期の子どもに嬉しい成分です。
そら豆の料理
春先、八百屋の店先に並ぶそら豆を見ると、つい手が伸びる。
あの、ふっくらとした鞘を割れば、中には艶やかな緑の豆が並んでいる。その姿がなんとも愛おしい。
さて、このそら豆。塩茹でにしても、焼いても、煮ても美味い。かつて江戸の庶民たちも、春の訪れをそら豆の香りとともに楽しんだに違いない。
今宵は、そら豆を使った料理をいくつか用意してみよう。
そら豆の塩茹で
まずは、そら豆本来の甘みを存分に味わうなら、やはり塩茹でが一番だ。
鍋にたっぷりの湯を沸かし、塩を加える。
鞘から取り出したそら豆をさっと湯にくぐらせること、ほんの二、三分。火を通しすぎては野暮というものだ。
茹で上がったそら豆を手でつまみ、皮を剥きながら、冷えたビールとともにいただく。
この単純な贅沢こそが、春の味覚の醍醐味である。
材料(4人分)
- そら豆(鞘から出したもの)……300g
- 塩……大さじ1
- 水……1リットル
そら豆の炭火焼き
江戸の酒肆では、そら豆を鞘ごと炭火で焼いて出す店もあったという。
これがまた、たまらなく美味いのだ。鞘に包まれたまま焼かれることで、中の豆は蒸し焼きになり、独特の甘みが引き出される。
皮を剥くと、ほんのりと焦げた香ばしい香りが立ち、これに塩をひとつまみ。
焼酎や日本酒の肴には、この上ない。
材料(4人分)
- そら豆(鞘付きのまま)……8~10本
- 塩……適量
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そら豆と新じゃがの炊き合わせ
そら豆は、煮てもまた格別だ。春の新じゃがと合わせれば、ほくほくとした食感と、ほんのり甘い豆の味が見事に調和する。
出汁に薄口醤油とみりんを少しばかり加え、じゃがいもを煮る。
柔らかくなったころ、そら豆を投入し、さっと煮含める程度で火を止める。
これを器に盛り、木の芽を添えれば、まさに春の風情そのもの。
材料(4人分)
- そら豆(鞘から出したもの)……150g
- 新じゃがいも……4個(小ぶりなもの)
- だし汁……400ml
- 薄口醤油……大さじ1
- みりん……大さじ1
- 塩……少々
- 木の芽……適量
そら豆とチーズのかき揚げ
そら豆の新たな楽しみ方として、かき揚げを提案したい。
そら豆に角切りのチーズを混ぜ、天ぷら衣を軽く纏わせて油に落とす。
チーズがとろりと溶け、衣の中でそら豆と一体となる。
揚げたてのかき揚げを塩でいただけば、噛むたびにそら豆の甘みとチーズのコクが広がる。
酒好きには、たまらぬ一品である。
材料(4人分)
- そら豆(鞘から出したもの)……200g
- チーズ(プロセスチーズまたはモッツァレラ)……100g
- 天ぷら粉……100g
- 冷水……150ml
- 揚げ油……適量
- 塩……適量
そら豆のすり流し
最後に、そら豆を使った粋な一椀を紹介しよう。
茹でたそら豆をすり鉢で丁寧にすり潰し、昆布出汁でのばしていく。
味を調え、器に注げば、それだけで一品の完成だ。
白い磁器の椀に映える緑のすり流しは、見た目にも涼やかで、食欲をそそる。最後に山葵をほんの少し添えれば、口の中でそら豆の甘さがより際立つだろう。
材料(4人分)
- そら豆(鞘から出したもの)……150g
- 昆布出汁……400ml
- 塩……少々
- 山葵……適量
そら豆というものは、ただ食べるだけでなく、その香りや色、食感まで愉しむものだ。古の江戸の職人たちが、仕事終わりにそら豆を肴に酒を傾けたように、今宵もまた、春の恵みを心ゆくまで堪能しようではないか。