偶々ネットで東京新聞のこんな記事が目に止まったので読んでみた。耳慣れない言葉なので興味があったので記事を読んでみた。
方言漢字って何だ
“草加にちらほら…なぜ「せん遍以(べい)」 八潮の昼間さん、方言漢字を探る”
記事によると、草加はせんべいで有名な街である。そのせんべい屋の看板で「せん遍以」と書かれた看板が目に着くようになり、何故「せんべい」を「せん遍以」と書くのかという疑問から、これは方言漢字じゃなかという思いが強くなったというある大学の職員が調べているといった内容の記事でした。
少し長いですが引用してみましょう。
言わずと知れた草加市の名物「草加せんべい」。製造・販売する市内の店舗を巡ると「せん遍以(べい)」と表現した看板や商品がちらほら。なぜ「煎餅」ではなく、この漢字を使うのか。疑問に思った独協大職員の昼間良次さん(45)=八潮市=は、その土地だけで知られる「方言漢字」とみて、謎を探っている。 (近藤統義)
東武線草加駅に近い県道交差点の角にある、老舗せんべい店「志免(しめ)屋」。看板には「草加せん遍以」の文字が見える。信号待ちをしていた昼間さんが、ハッと気付いたのは一年前のことだ。「『遍以』はこれだけでは読めない。草加特有の表現なのではないか」
地名と街づくりを考える市民グループ「八潮の地名から学ぶ会」の事務局長として、さまざまな方言漢字を調べてきた昼間さん。早速、市内の約五十店を訪ね歩いて商品の包装紙やシールを集め、店主らに「せん遍以」と表記する理由を尋ねた。
ただ、その答えは「考えたことがない」「昔から使っているから」がほとんど。残念ながら核心には迫れなかったが、同じ店でも商品によって使わなかったり、値段が高い商品に使ったりする傾向があることが分かってきた。
店主の中には「固焼きの特徴がイメージとして伝わるよう、平仮名ではなく漢字なのでは」と推測する人も。独協大の中国人教員に相談すると、「遍」には広がるとの意味があり、商売の験担ぎだとする解釈も飛び出した。
その上で昼間さんは、変わった漢字を使うことで本場感や元祖感を出す▽他の店との差異を強調する▽高級感やお薦め商品としてアピールする-などの仮説を立てた。東北の南部せんべいや名古屋のえびせんべいなど、県外でも使用例がないか調査を進めている。
これらの調査結果は、十七日に八潮市の八潮メセナ・アネックスで開かれる「方言漢字サミット」(入場無料)で報告する。昼間さんは「文字という表層から遡(さかのぼ)り、背景にある人の営みや文化、歴史を感じてほしい」と話している。
東京新聞 TOKYO Web
この記事を読んでみて、いやー何かおかしくないかと違和感を感じてしまった。
それに初めて目にする「方言漢字」ってなんだ。
気になって調べてみると「方言漢字」とは、ざっくりと言うとどうやら次に当てはまるような漢字のことを言うようである。
- その地方で良く見かけ普通に使われている漢字だが、一般的には難解で読めない漢字のこと。
- 読み方は同じでも充てる漢字が違う。
具体的には、1が「閖 」(ゆり)、「杁」(いり)などの漢字がそうで、2が例えば「寿司」の漢字が関東では「鮨」関西では「鮓」と表記されたりするのが方言漢字と言うらしい。成る程。
普段何気なく使っていてあまり気にも止めなかった漢字が方言漢字といった括りになっていたとは知らなかった。
それでは今回の記事にある「せん遍以」はどうだろうか。
実はこの二つの漢字は、其々の音を表す漢字の一つで、看板はそれを「変体かな」で書いているわけだが、とどのつまり平仮名表記を「現用かな」と「変体かな」を組み合わせて書いているだけなんじゃないかと思うのだがはたしてどうなのだろうか。
変体かなとは
昔々は今と違ってパソコンなんて物はありませんから、キーボードを叩けば文字が書けるなんて便利なことはありません。漢字一文字一文字を墨を付けた筆で書いていました。
そんな中、漢字を書く筆順に則って極限にまで省略した字が今の平仮名で、その途中過程の崩した字体が変体かなとなります。
因みに「へ」だけでこれだけの漢字が使われてます。
昔はこれだけの漢字が「へ」と言う音に使われていて、かつ変体かなも一つの漢字に幾つもあります。どれを使うかはその人次第ですから当時の文献を今の人が読むとなったらとても大変だと想像に難くありません。それに比べて現代は平仮名で統一されてます。五十音は一音一字のみ。ですから今ではとても簡単に読み書きすることができます。
変体かなで書いてあれば方言漢字なの?
さて、こういった変体かなを使った看板を街で見かけることってあると思います。よく目にするのはお蕎麦屋の看板じゃないでしょうか。
例えば、この四文字。
ご存じ街でいたるところで見かかる「小諸そば」の文字。
皆さんもどこかで食べたことがあるかと思います。この最後の2文字が「変体かな」で書かれています。元の漢字は 「楚者」 に点々。
先ほど草加せんべいの例でいうとこちらも方言漢字と言わないといけないような気もしますが、これは思うに江戸の雰囲気を出そうとして敢えて変体かなを使ったんじゃないかなと推測します。
現にこの「楚者」の字は全国各地で見受けられます。方言漢字と言うにはちょっと違うような気がします。
それともう一つこの記事で違和感を感じたのはこちらで紹介されているお煎餅屋さんの店名が「しめや」さんと言って、漢字は「志免屋」と書きます。何を隠そうこちらに充てられている漢字も「し」と「め」の音を表す漢字の一つで「変体かな」を使ったの店名でなのです。
なので、店名からして平仮名の音を漢字で書いた屋号としているので「せんべい」の「べい」の音を単に漢字で書いて洒落ただけのような気もするがいかがだろうか。
結局どっちなのだろうか
草加市のせんべい屋の多くがこの変体かなを使った表記をしていて、かつ他の地域ではまったくこのような表記をしていないないのなら、この記事にあるように方言漢字とも言えなくないかもしれないが、個人的には変体かなを使っている場合は、方言漢字じゃないのではないかと思う次第である。
感じかたは人それぞれだと思います。皆さんはどう感じましたでしょうか。
その後の調査結果を聞いてみたいと思った次第です。
最後までお読みいただきありがとうございます。